契約結婚のススメ
「はい。わかりました。しかし専務も大変ですね」

 久々の東京生活なのに、今回もゆっくりはできなそうだ。

 せめて、新居選びは陽菜とふたりでしたいが、時間がとれるかどうか。

 明るい陽菜の笑顔が浮かんだところでタイミングよく村上が「もうすぐ結婚なのに、お気の毒です」とのたまった。

「えっ、専務、結婚するんですか!」

 営業部長と、運転中の営業までギョッとしたようにバックミラー越しに俺を見る。
 赤信号で停車中だからいいが、そこまで驚くか?

「ああ、半年後にな。ちょどその時期、予定が空いてるクルーザーがあるから貸し切りで披露宴をしようと思う。お前たちも参加してくれよな」

「ありがとうございます! お相手はどちらの令嬢ですか?」

「鎌倉にある料亭、枇杷亭の娘だ」

 村上が「相手の女性はこの春大学を卒業したばかりなんですよね」と、またしても余計な情報を語りだす。

「歳は関係ないだろ」

 ギロリと睨むと、村上は肩をすくめるが少しも悪そうじゃない。

「さすが専務」
< 49 / 203 >

この作品をシェア

pagetop