契約結婚のススメ
 来賓の多くは枇杷亭を利用してくださるお客様でもあるようだけれど、お店を手伝っていない私には面識がない人ばかり。

 ましてや一貴さんのお仕事の話になると、私にはさっぱりわからない。

「一貴さん、今の方々は?」

「ん? 右が外務大臣政務官。左が国土交通事務次官」

 えっと。事務次官って、官僚のトップだっけ?

 一生のうち知り合う機会などなかったはずの人々の登場に面食らう。

「そ、そうでしたか……。すみません私、そんなに立派な方とは知らず」

 なにか粗相をしなかったかと心配になる。

「大丈夫だ。まったく問題ない」

 うなずくと、にっこり微笑んでぎゅっと肩を抱いてくれる一貴さんは優しい。

 私をひとりぼっちにしたりせず、終始気にかけてくれる。

 海外生活が長いせいかレディーファーストが身についていて、なにをするにもエスコートしてくれる。

 事あるごとに私を振り返ってくれるから、まるでお姫さまにでもなった気分になり胸がきゅんきゅんと疼く。
 その度に全身に広がる快感は、中毒性があって危険だ。

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