契約結婚のススメ
「今から向かう先は、南城郵船の重役達だ」

「はい。わかりました」

「気のいいおじさん達だから、緊張しなくていいよ」

 包み込むようなその笑顔と手の動き。本当になんて紳士なんだろう。

 心細いこんな時だからこそ、優しさが心に深く染みる。


「やあやあ、おめでとう」

「ありがとうございます。妻の陽菜です。至らない点も多いかと思いますが、どうぞよろしくお願いします」

 彼曰く気のいいおじさん達は、相好を崩して祝いの言葉を贈ってくれる。他のお客様方もそう、おめでたい席に相応しい喜びを表現してくれる。

 いずれはトップに立つ彼の妻が、こんな頼りない小娘で大丈夫なのかと心配しているのかもしれないが、それを表に出したりはしない。

 中には冷たい視線もあった。

 そういう場合、振り返って目が合うのは、決まって女性だ。

 でもそれは仕方がないのかもしれない。南城一貴は、独身女性ならば、誰もが憧れる存在なのだから。

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