契約結婚のススメ
 夕方六時から始まってすでに日も暮れているし、ベールも外したから座ってしまえば目立たない。

 ホッとしたあまり、ため息と共に「はぁ」と深い声も出てしまう。

「お疲れさま。大変だったでしょ挨拶。ほらほら甘い物でエネルギー補給」

「きゃー、ありがとう」

 友人のひとりが、デザートビュッフェからケーキやフルーツを持ってきてくれた。

「陽菜ー。本当に結婚しちゃったんだねー」

「うん。自分でも不思議な感じ」

 招待状を送った後はSNSが大変な騒ぎになった。結局カフェに集まって事情を説明しても、信じられないのは私自身も同じ。

「ねえ陽菜、幸せ?」

「ふふ。うん、幸せだよ」

 きゃあきゃあ騒ぎ合いながら、どこまでが本当なのかなぁと思う。

 絵に描いたような彼の優しさも、この素晴らしい結婚披露宴も、すべて夢じゃない。

 見せてと言われてテーブルの上に出した左手の薬指で光る指輪も本物だ。

「きゃー、ピンクダイヤが並んでる」

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