御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「うちの別荘がその畑の近くにあって、子どもの頃、仕こみの時期に遊びに行くと醸造香が辺り一帯に漂っていて、その香りが好きだったんだ。質が高いワインを製造しているのに売り上げに直結しなくて、二年ほど前に事業を畳むと聞いたんだ」

椅子に横向きに座って足を組み、黎は順を追って話している。

「ちょうどそのとき、株でかなりの利益をあげて、それを使って畑はもちろん会社を買い取ったんだ。海外の投資家に狙われてるという話を耳にしていい気分じゃなかったのもあったかな」

「そうだったの」

当時を思い返し淡々と話す黎に、菫はぼんやりと答える。

葡萄畑や会社を思いつきですぐに買えてしまう黎にびっくりし、黎が世界屈指の大企業の後継者だとつくづく実感する。

「買い取ったとはいっても、俺にワイン作りのノウハウはないしそれに専念する余裕もない。だから事業形態はほぼ以前のまま。従業員も誰ひとり解雇していない。ただ、社名に紅尾の名前を入れたり、紅尾系列の商社を絡ませて販路を広げるサポートはしてる。まあ、紅尾の名前を押しつけて檄を飛ばしてるって感じかな」

「それはなかなか心強いね」

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