御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
学校が休みの土曜日には園内の掃除をしたり休日に催される運動会やお遊戯会の手伝いにも駆り出されていたのだ。

菖蒲とともに両親や先生たちのサポートをするのは楽しくて、それこそ家族総出で幼稚園を運営しているのだと感じる瞬間でもあった。

黎が話していた葡萄農家や、巨大企業グループを家族一体となって支える黎の家族。

分野も規模もまるで違うが、菫の家族と似ているような気がして複雑な思いが生まれる。

「菫?」

黎は黙りこむ菫を気にかける。

菫は顔を上げ、なんでもないと首を横に振った。

「私も、実家にいた頃家族総出で園児たちと走り回ってたのを思い出しちゃって」
 
沈んだ気持ちを振り切るように、菫は明るく笑う。

「そうか。幼稚園だもんな、体力勝負で大変だな」

「そうなの。園児たちに全力で付き合ってたらヘロヘロになっちゃう。父さんと母さん、若くないのに大変だよね。まあ、今は菖蒲が仕切ってるみたいだから安心だけど」

家族への複雑な思いに心は揺れ、菫の声は次第に小さくなる。

とはいえ母親から突き放され勘当同然の自分にはどうすることもできない。

「そうだ、菫」

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