御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「お、おい、いきなりどうした」

勢いよく抱きついてきた菫を、黎は両腕を広げて受け止める。

椅子がわずかに後ろに傾き、ふたりの身体も揺れた。

それでも菫は黎から離れようとせず、わずかな隙間もないほどお互いの身体を密着させた。

「菫? 抱きついてくれるのはうれしいけど、これじゃキスもできないぞ」

「それは……あとで」

もちろんキスはしたいが今はただ黎にしがみつきたい。

菫がこれまで知らなかった黎の想いに触れて、胸がいっぱいなのだ。

「俺は今すぐキスしたい」

艶のある声に、菫の身体が小さく反応する。

「キスだけじゃ物足りないしベッドで愛し合いたいって思ってるんだけど、それも後回し?」

「えっと、それも、あ、あとで」

わずかに間を空けたまごつく声。

黎は「往生際が悪い」とつぶやき笑いをかみ殺す。

「菫は俺と違って我慢できるんだな。やっぱり俺の方が菫を好きってことか。さびしいもんだな」

黎の手が、菫の頭を意味ありげに撫で、そしてうなじへと降りていく。

そこを指先で触れた途端、菫の口から浅い吐息が漏れる。

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