御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
だからせめて黎の邪魔にならないよう気をつけるつもりでいるのだ。

黎は顔をしかめため息を吐く。

「もっと気楽にしてろって言っただろう。それにこの二年を取り戻すためにも楽しい毎日にするって。だから妙な気遣いはするな」

「うん、そうだね」

「それに菫がかける迷惑なんてどうせかわいいものばかりだろ。全部受け止めてやるから気にしなくていい。菫が俺の家にいてくれるだけで、そんなのすべてチャラだ。わかった?」

「わかった」
 
語気を強めて言い含められ、菫は渋々うなずいた。

「俺は二年を取り戻すだけじゃ物足りない。菫のこの先の全部を見守るつもりだ。菫の喜びも悲しみも、それこそ迷惑をかけられてもそれも全部」

「……黎君」

「だから、これからよろしく」

黎が目尻を下げると同時に天ぷらを揚げる音が一段と大きくなる。
その音に混じって届いた黎の言葉が、菫の涙腺を刺激する。

「私のほうこそ、よろしくお願いします」

息苦しさを覚えるほどの幸せと、言葉にできないほどの黎への愛しさに身を震わせながら、菫は今ようやく黎と一緒に暮らしていくのだと実感する。

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