御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
引っ越しの疲れはもちろん見合いの件であれこれ悩み、すでにキャパオーバーだったのだろう。

「もう心配しなくていい」

黎は菫の頭を柔らかな仕草で撫でながら、寝室の片隅に飾っているくす玉をぼんやり眺める。

ベッドに入るたび自然と目に入ってくるそれは、黎にとって後悔の象徴だった。

恋人との別れにてこずっている間に、菫は黎以外の男性にかっさらわれてしまったのだ。

くす玉を手渡されたときにでも、綺麗ごとや順序などすっ飛ばして菫に想いを伝えればよかったと、何度も後悔した。

結局、菫は他の誰のものになったわけではなかったが、そんな嘘をつかせるほど菫を追い詰めた自分の馬鹿さ加減に辟易した。

「黎君……」
 
腕の中で菫はもぞもぞと身体を動かし寝心地のいい場所を見つけしがみついてくる。

規則正しい寝息が聞こえてきて、黎は複雑な思いで苦笑した。

「そんなかわいい顔して、ひとりでさっさと寝るなよ」

菫の真っすぐな髪に指を通してその感触を楽しみながら、黎は菫の唇に自分のそれを重ねた。

しっとりと吸い付くような柔らかさに気持ちは高ぶり、ついその先を求めてしまう。

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