御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
そして椅子ごと菫の隣に近づいてきた。

「な、なに、どうしたの」

目の前で意味ありげに口元を上げる笹原に、菫はうろたえた。

思わず距離を取るが、笹原は気にすることなく菫の耳に口を寄せる。

「実はこの間の土曜日の夜、見ちゃったんですよねー」

笹原は語尾を伸ばし、やけにゆっくりと話す。もったいぶる様子に菫は悪い予感がした。

残念ながら、そんな予感はよく当たるのだ。

笹原はにんまりと笑い、言葉を続ける。

「大通りを歩くおふたり、まるでファッション雑誌の表紙みたいでしたよ。二度見する人続出で、笑っちゃいました。今日みたいにスーツ姿の紅尾さんはもちろんかっこいいですけど、ラフなダッフルコートもばっちり似合ってました。すっぴんの御園さんもすごくかわいかったし」

「お、おふたり……」
 
菫は〝土曜日〟と〝おふたり〟という言葉にひっかかる。

土曜日といえば、黎とふたりで映画を見に行きその帰りに大通り沿いにあるリカーショップを訪ねたのだ。

そこは〝すみれ〟を扱っている店で、黎が店頭に並んでいるのを見せたいとはりきり、菫を連れて行ったのだ。

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