御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「大丈夫です。きっとすぐに止まりますから。それよりどうします? お母さん、すごい顔で睨んでいてこっちに来ますよ」
 
見ると菫の母が高ぶった感情そのままに足を踏みならし、近づいてくる。

二年近く菫を無視し続けてきた母がわざわざ出向いてきたのだ、本気で菫を連れ戻そうとしているとしか思えない。

「どうしよう」

「逃げましょう。ひとまずここから逃げてから考えましょう」

「逃げる……うん、わかった」

「歩いていると追いつかれるので、走りましょう」

「う、うん」
 
笹原は急かすように菫の背中を押し出した。

「御園さん、早く」

菫はあと少しで手が届く所まで近づいた母を横目で確認すると、母に背を向け駆けだした。

「菫、待ちなさい」

甲高い母の声に思わず身体が反応し、つい足を止めそうになる。

条件反射だ。

御園さん、ひとまず駅まで走ってください。もうすぐですから」

走るスピードが落ちた菫の腕を引き、笹原が力づける。

「わかった、ごめん」

菫はお腹に負担がかからないよう気にかけながら走った。

会社から歩いて五分ほどの距離がやけに遠く感じる。

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