御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「ごめんね。私のせいで走らせて」

関係のない笹原に迷惑をかけてしまって申し訳ない。

「菫っ」
 
走り出してから何度も聞こえる母の声が、次第に遠ざかっていく。

人通りが多くおまけにタクシーを待たせているので簡単に追いかけてこられないのだろう。

ようやく駅に着いたとき、菫と笹原は肩を何度も上下させ安心したように顔を見合わせた。





「通りが混んでいる時間で助かりましたね」

呼吸を整えながら、笹原が笑顔を見せる。

「家族のことに巻きこんじゃって本当にごめんね」

「いえいえ、いいんですよ。お役に立てたならなによりです。それより改札を抜けましょう。まさかとは思いますがお母さんが追いかけてくるかもしれないですからね」

菫は神経質に辺りを見回した。

母の姿は見あたらず、安心したせいか足元から力が抜けていく。

「御園さん、そこにいると邪魔ですよ」

改札を出入りする人の波にぼんやりと紛れていた菫に、すでに改札の前に立つ笹原が心配そうに声をかける。

菫は重い足取りで笹原を追い、改札を抜ける。

突然母が現れ、予想以上のダメージを受けている。

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