御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
気持ちを切り替えてしっかりしなければと思うが、なかなか心が追いつかない。

胸の中が大きな塊に占拠されたように苦しくどんどん落ちこんでいく。

今は笹原の背中を見ながらついて歩くだけで精一杯だ。

「御園さん、ちょっとそこに入りません?」

改札を抜けてホームに向かう途中で、笹原が構内で営業しているカフェを指差す。

「のどが乾いたし、ちょっと休憩しましょう。ここのクリームソーダは最高なんですよ」

「うん、そうしようか」

菫の腕を掴み明るい声で話す笹原に、菫は抑揚のない声で答えた。

クリームソーダを思い浮かべても今はとくに欲しくない。

けれど断る気力もない。

とりあえず笹原の言葉に従おう。

菫はぎこちない笑みを浮かべ、カフェへと足を向けた。

 

 

カフェはセルフサービスで、笹原がふたり分のクリームソーダを手に席に戻ってきた。

「こんなときは甘いものを食べて落ち着かないと。あ、ステーキならまた日を改めて行きましょうね」
 
店の奥の四人がけのテーブル席に向かい合って座り、笹原は明るく菫に話しかける。

菫はぼんやりとうなずき、手元のクリームソーダに手を伸ばした。

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