御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
広報宣伝部の真上のフロアにある人事部に足を踏み入れた途端、菫は待ち構えていた蓮井に奥の部長室へと案内される。

途中、彼女が簡潔に話した内容によると、菫の母は今人事部とは別のフロアにいて、人事課長と話をしているそうだ。

いよいよ母と顔を合わせるしかないと覚悟を決めていた菫は、ワンクッション置いてもらえたことでわずかに気持ちが落ち着いた。

「失礼します。広報宣伝部の御園です」

ノックの後部長室の扉を開くと、部屋の中央のソファに腰かけていた人事部長が顔を上げた。

そして部長の向かいに座っていた男性が振り返り、立ち上がって菫に会釈した。

百八十センチ以上はあるだろう長身で、上品な光沢を持つ細身のスーツがしっくり馴染んでいる。

確固たる意志を感じさせる黒い瞳、そして品のある佇まい。

黒い短髪も相まって、清潔感あふれる見た目抜群の男性だ。

菫は会釈を返しながら、なぜか黎を思い出していた。

秀麗な見た目だけでなく余裕を感じさせる佇まいが黎によく似ているのだ。

「御園さん、待っていたんだよ」

部屋の入口に立つ菫を、人事部長が手招き呼び寄せる。

菫は足早に歩み寄った。

< 190 / 294 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop