御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
母が押しかけてきたと聞いて以来緊張していた身体からふっと力が抜けていく。

足元が小さく揺れ、菫は倒れこむようにソファに腰を降ろした。

「大丈夫ですか? 今も部長がおっしゃっていた通り、お母さんが御園さんの意志を無視して退職を要求しても、簡単にそれは認められないから安心してください。そうだ、挨拶が遅れましたが、私、弁護士の紅尾です」

菫の隣に座る男性が、話の途中で思い出したように名刺を差し出した。

「紅尾?」

菫はその名前に大きく反応し、受け取った名刺をまじまじと見つめる。

「弁護士、紅尾極……まさか」

「さすがに気付きますよね。そうです、私は紅尾黎のいとこなんです。今日も黎からの依頼でこちらに伺いました」

「え、黎君のいとこ」

「はい。黎の父親の弟が私の父です。年齢は私のほうが彼よりも三歳年上ですけどね」

「そうなんですか……」

菫は目を丸くし驚いたが、すぐにやっぱりそうだったのかと納得する。

ここに来てからずっと、黎に似ていると感じていたのだ。

言葉を交わすと黎よりも物腰が柔らかで人当たりがよさそうなのは、弁護士という職業が影響しているのだろう。

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