御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「親バカも折り紙も問題はありませんが、明日の社長報告に備えて会議で詳細をつめてからです。のんびり折り紙に時間を費やしてる場合じゃありません」

酒井は淡々とそう言って席を立つと、まるで睨みつけるような厳しい視線を菫に向けた。

菫は一瞬酒井は折り紙が嫌いなのだろうかと考えたが、そうではないとすぐに思いを改める。

「そういえば、さっき経理部にもう一度確認したいことがあるって言ってなかったか?」

黎に声をかけられた酒井の顔に、すっと赤みが差したのだ。

ほんの一瞬だが目元も優しく緩んでいた。

「はい。本番までのスケジュールで気になる点があって、確認しておきたいんです」

酒井が表情を崩したのは一瞬で、今はそれまで同様クールな物腰で黎に向き合っている。

「だったらもう一度降りてきてもらうか。完璧な酒井に気になるって言われて俺も気になってきた」

「完璧なんて、言い過ぎです」

「謙遜するなよ。うちの部署で酒井を頼りにしない奴はいないだろ」

「あ、ありがとうございます」

酒井の顔がぱっとほころぶ。

目鼻立ちがはっきりとした綺麗な顔に優しさが加わり、一気に華やいだ。

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