御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました～愛を知らない彼女の婚前懐妊～

「そうじゃなくて。実家はどうなってるの？　お父さんの会社は継がないの？　あれほど大きな会社、継がないわけにはいかないと思うけど」

ひとりっ子の悟に父親が社長を務める畑中建築を継がないという選択肢はないはずだ。

その悟がどうして別会社に就職しているのだろう。

それも同じ業界でも最大手の企業だ。

「もちろん父親の会社は継ぐよ。三峯はそれまでの修行の場。うちと同じ業種とはいえ最大手。仕事の規模がまるで違って勉強になるんだ。力をつけていずれ父さんの後を継ぐ予定」

「なるほど。跡取りも大変だね。それで、どうしてわざわざここに？　ただ懐かしくて私に会いに来てくれたわけじゃないでしょう？」

悟は母が未だにあきらめていないお見合いの相手だ、ただ近いというだけでやって来たわけはないだろう。

「うーん。見合いをいつにするか相談しようと思って来たんだ。このところ忙しくて二日ほど会社に泊まりこみでさ、きりがついたから帰って寝ようと思ったらちょうどここの前を通りかかって。菫を呼びだそうと思って受付で話してたら運よく見つけてびっくりしたよ」