御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました～愛を知らない彼女の婚前懐妊～

「あ、だけどいつからって聞いてないし、もしかしたら航の勘違いかもしれないし」

見るからに気落ちする菫を果凛は心配するが、菫は首を横に振る。

「紅尾ホールディングスの後継者だから、不思議じゃないよね。突然だったからびっくりしただけ。それで、航君はなんて言ってたの？」

菫は内心の動揺を隠し、果凛に気を使わせまいと軽い調子を意識する。

果凛はしばらくの間ためらっていたが、菫の様子を気にしながら口を開いた。

「航が言うには赴任の前に現地に行って家を決めたり事務所の様子を確認することがあるらしいの。この間飲みに行ったときに近々イギリスに何度か行くことになりそうだって黎さんが言ってたらしくて。きっと事前の確認かなにかじゃないかって……」

「たしかにこの間のメールの送信先はイギリスだった」

このところとくに海外からの電話、その中でもイギリスからの電話が多いようで、休日で家にいるときにも英語で対応している姿をよく見る。

流暢すぎる話しぶりはまるでネイティブで、今すぐ赴任しても困らないだろう。

思い当たることがありすぎて、菫は黎の海外赴任の話は間違いないと確信する。