御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~




その晩ベッドに入った黎は徹夜明けで疲れていたせいか、菫を胸に抱き寄せた途端我慢できずにまぶたを閉じた。

やがて規則正しい寝息が菫の耳に届く直前、黎は菫を抱きしめる手に力をこめた。

そして。

「来週、ロンドンに出張なんだ」

寝ぼけた声でつぶやいた。

黎の腕の中でその言葉を聞いた菫は、黎の海外赴任は近いと覚悟した。






翌日、黎は出張が延びたせいで本来の仕事に影響が出ていると言って、土曜日だというのに会社に出かけた。

『今日は菫と買い物にでも行くつもりだったのに』
 
そう言って家を出る直前まで渋っていたが、黎が仕事を投げ出すわけがない。

結局普段よりも早い時間に家を出て行ったほどだ。

朝食の席でロンドン出張について菫が尋ねると、黎はあっけないほど簡単に答えた。

『向こうの企業のシステム開発をロンドン支社が受注したのはいいけど途中何度も変更が入っていよいよ納期に間に合わないらしい。それでこっちから何人かでサポートに行くんだ。他にもあっちがらみの案件をいくつか抱えてるからついでに片付けてくるよ。せっかく帰ってきたのにごめんな』

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