御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
〝あっちがらみの案件〟というのは、果凛が言っていた海外赴任前の現地調査のようなものだろう。

やはり黎の海外赴任は近いと感じ、菫は落ちこんだ。

おまけに黎が出かける直前酒井から黎に電話があり、リビングで話す黎の言葉を聞くとはなしに聞いていると、ロンドン出張のメンバーに酒井が含まれているとわかった。

『その案件って専務がらみのだよな。酒井がロンドンに行ってる間に仕様変更なんてされるとまずいから、今日明日で完結させよう。俺も今から向かうから、手伝うよ。そうだろうそうだろう。頼りがいのある先輩に感謝しろ。じゃ、後で』
 
酒井の声は聞こえなかったが、黎と対等にやり取りしているのが容易にわかり、さらに菫は落ちこんだ。
 
少なくとも黎に彼女への恋愛がらみの感情はなさそうだが、仕事のうえでは酒井は黎の片腕のような存在なのだろう。 

今回は一週間程度の出張だとしても、本格的な赴任となれば年単位だ。

そのときにも酒井は黎の片腕として同行するかもしれない。

そう思った瞬間菫の中にモヤモヤとした感情が生まれ、どうしようもなく苦しくなる。

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