御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
それに果凛から事前に聞いて覚悟していたとはいえ、それを明るく話す黎の姿を見るのはあまりにも切ない。

けれど、紅尾ホールディングスの後継者としての立場を考えると引き留めるわけにはいかないし、もちろん菫にそうするつもりもない。

『海外だと水も食べ物も変わるから、体調に気をつけて』

そう言って笑うしかなかった。
 
 



週が明けても黎は忙しく、日付が変わってから帰宅する日が続いていた。

菫も期末関連の業務を抱え忙しいが、どうにか残業をせずに帰宅し食事を作って黎の帰りを待っていた。

一緒に暮らし始めて一週間も離れるのは今回が初めてだ。

前回のたった一泊の出張とはわけが違う。

おまけに海外に行ってしまうとなれば連絡を取るのにも躊躇しそうで、菫は今から憂鬱だ。

そしていよいよ明日、黎はロンドンに向かう。

黎とふたりで遅い夕食を終え、片付けも済ませた菫は寝室を覗いた。

見ると黎がスーツケースを広げて出張の準備をしている。

子どもの頃から海外には何度も行っているらしく、慣れた動きで次々荷物を詰めている。

「なにか手伝おうか?」

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