御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
黎の自宅のバスルームは広く、浴槽は菫がひとりで入るにはもったいないほど大きい。

たっぷりの湯に入り目を閉じると、一日どころか生まれて以来抱えてきた疲れも悩みも吹き飛んでしまいそうなほど気持がいい。

ふと手足を見ると以前よりも細くなっていて、腰回りも小さくなっている気がした。

ここ最近つわりは治まっているが、食欲が戻っていないせいで体重も落ちている。

職場でも痩せた菫を心配して声をかけてくる同僚もいる。

もっと食べなきゃね」

湯の中のまだ平らな腹部に触れ、菫は苦笑する。

この時期無理に食べなくても赤ちゃんの成長にそれほどの影響はないとドクターには言われているが、やはり意識して食べるべきだろう。

「そうだぞ、俺がいない間もちゃんと食べろよ」

突然黎の声が聞こえ閉じかけていた目を開くと、黎がバスルームのドアを開き入ってきた。

服はすべて脱ぎなにも身につけていない。

「え、どうしたの?」

菫は肩まで湯に浸かり、両手で浴槽の縁にしがみいた。

あっという間に赤くなった顔を伏せ、きつく目を閉じる。

「どうしたのって、一緒に入ろうと思って」

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