御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
焦る菫にかまうことなく黎はシャワーの下に立ち身体を洗い始める。

「と、突然、どうして。私、すぐにあがるから待っててくれたらいいのに」

薄目でそっと見ると、黎の引きしまったヒップが目に入り、あわあわと視線を逸らす。

けれどヒップだけでなくバランスよく筋肉がついた綺麗な背中が目に焼き付き離れず困る。

「いまさら恥ずかしがらなくてもいいだろう。ベッドでは全部見てるのに」

面白がる黎の声に菫はぶんぶんと頭を横に振る。

お願いだから早くここから出て行ってほしい。

そんな菫の願いは叶わず、気付けばバスタブのたっぷりの湯が大きく揺れていた。

黎が湯の中に入ってきたのだ。

「菫、逃げるなって」

耳元に黎の気だるげな声が聞こえたと同時に、菫は背後から伸びてきた黎の長い腕に抱き寄せられた。

その手は菫のお腹の上でしっかり結ばれ、肩に黎の顎が乗っている。

菫は慌てて抜けだそうとするも、きつく結ばれた黎の手が緩む気配はない。

「いいからジッとしてろ」

吐息混じりの声に、菫の全身が熱くなる。

「れ、黎君、あの……いきなりどうして」
 
そわそわと後ろを気にしながら尋ねてみる。

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