御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「それほど好きなら結婚すればいいのに。菖蒲は考えすぎだよ」

「それってどういう意味……?」
 
菖蒲は眉をひそめ、菫に疑うような視線を向ける。菫がふざけていると思っているのだろう。

「意味もなにもそのままだよ。悟先輩とこのままおつき合いを続けて結婚すればいいってこと」

「それができないから菫ちゃんにお願いしてるの」

暢気に話す菫にかっとし、菖蒲は声を荒げる。

「この間も言ったけど、私は幼稚園を継ぐから社長になる悟君とは結婚できない。片手間で支えられるほど社長夫人の仕事は甘くないのよ。悟君の側にいてサポートできる人じゃないと無理なの」

「だからそれが考えすぎなの、悟先輩は菖蒲のサポートがなければなにもできないお馬鹿さんなの?」

菫は淡々と落ち着いて話を続ける。

「悟君はお馬鹿さんじゃない。昔からお父さんの会社の将来を考えてるし、今だってあんな大きな会社で一生懸命勉強してる」

平然とした態度を崩さない菫に我慢できなかったのか、菖蒲は気色ばんで詰め寄る。

興奮して顔は赤く、呼吸も乱れている。

なのに言いよどむことなくすらすらと気持ちを口にしている。

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