御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「わかったようなこと言わないで。私もできるならそうしたいよ。でも無理なの。今、幼稚園の経営は厳しいの。最近できた幼稚園は英会話を取り入れたりパソコンのレッスンもやってて人気で。昔から変わらないうちの幼稚園は生き残るために必死なの。だから悟君のためにだけ時間を割けない。結婚なんて無理なのよ」

「菖蒲……」

どこまでも頑なに言い張る姿に、菫は菖蒲の悟への想いの強さを思い知らされる。

好きだからこそ相手のために離れようとしている菖蒲の気持ちが痛いほどよくわかるのだ。

菫が黎に対して抱いている想いと似ているからだ。

おまけに今まで知らなかった幼稚園の状況を知らされ、自分が思っていた以上に菖蒲の悩みは深いとわかり罪悪感で胸が苦しくなる。
 
だからこそ菖蒲には幸せになってもらいたい。

今までひとりで頑張っていた分、これからは悟とともに楽しく過ごしてほしい。

菫は気持ちを落ち着け、菖蒲に向き直る。

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