御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
菫は黎の顔や声を思い出し、今すぐ会いたくなった。

けれど今朝イギリスに向かったばかりでこれから一週間、会えないのだ。

「菫ちゃん、だったらその人と結婚するんだよね」

「うん。入籍だけでも早めにって言ってくれてるけど。向こうが仕事で忙しいのと母さんのことで落ち着かないからタイミングを図りかねてて」

菫は視線を泳がせ口ごもる。

母が勧める見合いには菖蒲も関係していて、どう話せば菖蒲を傷つけずに済むのか考え言葉に詰まる。

「私のことならもう気にしなくていいよ。悟君と結婚してなんて言わない。菫ちゃんのお腹にいる赤ちゃんとパパを引き離すことなんてできない。菫ちゃんだってその人のことが好きなんでしょう?」

「うん……ずっと好きだったの」
 
菫はぽっと頬を赤らめうつむいた。

「なにもう、照れちゃって。なんだか私ってふたりを引っかき回しただけの面倒な女じゃない。だったらさっさと結婚しちゃえばいいのよ」

菖蒲は呆れた声でそう言って、菫の背中をぽんと叩いた。

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