御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
これまで菫が自由にすごせていたのは菖蒲が実家のなにもかもを背負ってくれていたからだ。

これ以上菖蒲が苦しむ必要はない。

「もういいよ。たしかに菫ちゃんのことがうらやましくて嫌いになったときもあったけど。私が地元に残ると決めたのは悟君が好きだったからっていうのが大きいし。気にしないで」

「ん。ありがとう」

悟のことを話す菖蒲の表情は晴れやかで、きっと悟との未来を前向きに考え始めたのだろう。

菫はホッと胸を撫で下ろした。

これまで勝手をしていた自分が言える立場ではないが、菖蒲には幸せになってほしいのだ。

「それより菫ちゃんだよ。難しいことなんて考えずに結婚しちゃえばいいのよ」

再び菫の話に話題が移り、菫は表情をこわばらせた。

「うん。結婚はするつもりだけど。実は黎君、イギリスに赴任するみたいで。ついていっていいものか悩んでて」

沈んだ声で話し始めた菫に、菖蒲は訝かしげな視線を向ける。

「なにを悩んでるの? ついて行ったらいいじゃない。せっかく赤ちゃんが生まれるのに離ればなれはさびしいよ。菫ちゃんだって一緒に行きたいんじゃないの? あ、それとも仕事をやめたくないとか」
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