御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「ううん、仕事は多分大丈夫。在宅勤務も選べるから会社と相談するつもり」
「だったら問題ないじゃない」
わけがわからないとばかりに菖蒲は首をかしげる。
「えっと」
菖蒲に真っすぐ見つめられ、菫は居心地の悪さに視線を逸らした。
「菫ちゃん?」
「問題は私なの」
気詰まりな空気に耐えきれず、菫は肩を落とし沈んだ声でつぶやいた。
「私、黎君の仕事についてなにも知らないの。スマホの機能も使いこなせないのにシステム開発なんて別世界の話でしょう? おまけに英語も話せないから黎君のサポートをするどころか足を引っ張るだろうし。赤ちゃんが生まれたらもっと黎君に頼ってわがまま言って、邪魔になるだけだから。それにいずれは紅尾ホールディングスのトップに立つからもっと私とは違う世界に行っちゃうだろうし」
ひと息に吐き出し、菫は大きなため息を吐く。
口に出したことでいっそう不安が具体的になり、やはり自分は黎にふさわしくないのだと思い知らされる。
なにもできない自分がイギリスに同行しても、黎のプラスにはならない。
「黎君には私じゃなくてもっと――」
「お馬鹿さんなの?」
「え?」