御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
それは黎に抱かれ乱れた菫が引っ掻いた跡だ。

場所が悪くてワイシャツで隠せず焦る菫に対して、黎は気にするでもなく、それどころか妙にうれしそうに鏡越しにそれを眺めていた。

「とりあえず入らせてくれ」

ぼんやりしている菫の肩を抱き、黎は空いている方の手でスーツケースを引いて玄関に足を踏み入れる。

「ごめんなさい。疲れてるよね、すぐにお風呂に入る?」

「ああ、でもまずはこっち」

「えっ」

背後でパタンとドアが閉まると同時に菫をドアに押しつけ、黎は当然とばかりに唇を重ねた。

強引に唇を押しつけられ、熱い舌先で表面が刺激される。

たちまち菫の全身に甘い熱が広がり抵抗する気持ちが封じこめられていく。

角度を変えて何度もキスを繰り返し、お互いの吐息だけが広い玄関に響く。

切羽詰まった黎の息づかいが色っぽくて、菫の鼓動がとくとく激しく音をたてる。

菫は黎が帰ってきたのだとようやく実感し、両手で目の前の愛しい人を抱きしめた。

「それって通訳とか翻訳の機械だよな。なに、俺が旅行に行こうって言ったから早速用意したのか?」

< 277 / 294 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop