御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
口を塞いでいる菫の手を外し、黎は首をひねる。

菫の言葉の輪郭がつかめず、答えに困る。

「それって出張についてくるってことか? それにどの国に行くことになってもって、海外前提の話?」

「うん。パスポートの申請はまだだけど、それは名字が変わってからのほうがいいだろうって極さんが教えてくれて」

「は? なんでここに極が出てくるんだよ。それに名字が変わるって」

黎は何度も「どういうことだ」と繰り返し、菫に戸惑いの目を向ける。

「あ、えっと。名字の件はその・・・・・・黎君の海外赴任のタイミングに合わせればいいかなと思うし、あ、婚姻届ならダウンロードして用意しておいたよ」

黎を見上げてにっこり笑う菫を、黎はぽかんと眺めている。

部屋には明るい曲調のクラシックが流れ、そろそろ日暮れだろうかオレンジ色の光がふたりの顔を照らしている。

「菫、聞いていいかな」

「うん、いいけど? 海外赴任の話ならついて行くから心配しないで」

「その話だけど、誰が海外に赴任するんだ?」

「……黎君」

黎の顔をおずおずと指さし答える菫に、黎は何度も首を横に振った。





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