御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
黎の怒りや嫌味などどうってことないのだろう。

「で? 明日にでも籍を入れる?」

「……え」

「せっかく婚姻届も用意してくれたし、極に連れられてうちの親に会いに行ったんだろ?」

「う、うん」

唐突に言われ、菫の胸は高鳴る。

手にしていた箸を置き、じわじわせり上がってくる幸せの感情を強くかみしめた。

「それと、これ」

黎はテーブルに並んだ皿や鉢の間から紺色のコロンとした小さなケースを取り出した。

「菫に婚約者はいないって知ってすぐに注文して、今日空港から帰って来る途中で受け取ってきた。サイズはまあありがちだけど、寝てる菫の指に糸を結んで確認した」

「え、それって。もしかして、そうだよね」

黎の手元にあるケースを凝視し、震える声で菫は尋ねる。

予想と違ったらどうしようとおろおろし、助けを求めるように黎をチラチラ見る。

「期待に応えられたらいいけどな」

黎はケースを手に席を立つと、テーブルを回りこみ菫の隣の椅子に腰を降ろした。

菫の鼓動がばくばく跳ねている。

落ち着きを失っている菫を、黎がおかしそうに笑う。

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