御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「こちらこそありがとうだ。うちの両親、かわいい娘ができたからまだまだ長生きするってはしゃいでる。俺が仕事ばかりだからあきらめてたみたいだな」

菫の身体をあやすように揺らし、黎は笑っている。

「それは、私だって。黎のお父さんとお母さん、私にも優しかった」

実の親が菫に見せない優しい顔を、黎の両親は何度も菫に向けてくれた。

「黎君が私の家族になってくれただけでもうれしいのに、さらにふたり。なんだか生まれ変わったみたいで不思議な感じ。あ・・・・・・でもね。私、電話で・・・・・・」

菫は涙で潤む目で黎を見つめる。

「よかったな」

菫が言いかけて言えずにいる言葉を察し、黎は穏やかに微笑んでいる。

「ひとことふたことでも、お母さんと話せてよかったな」

「そう、そうだね」

やっぱり黎は知っていたのだ。

菫は再び黎の胸に顔を埋めた。




黎のいとこの極から菫に連絡があったのは、黎がロンドンに発った翌日の日曜日だった。
 
その前日に菖蒲と悟が入籍し、ふたりそろって実家に顔を出したときに菖蒲は菫も近々結婚する予定で、おまけに妊娠していると話してしまった。

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