御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
その声を聞いた途端泣き出した菫を、黎の両親はオロオロしながらも優しく見守ってくれた。

『嫁ぐってさびしいわよね。大丈夫よ、結婚してもお母様はお母様。菫ちゃんを想ってくれるわよ。できればそこに私も混ぜてほしいわ。愛想のない息子ひとりでさびしかったのよ』

菫の涙を誤解した黎の母の明るすぎる声につい笑みを漏らし、菫は涙を止めた。
 
菫の母の言葉は、初めて聞く優しい声だった。

だからといって長く味わっていた苦しみやさびしさを帳消しにはできないが、黎と新しい生活を始めるタイミングでのその声は、言葉が持つ意味以上に菫の心に大きく響いた。

「それに、黎君のお父さんとお母さんが赤ちゃんのことも喜んでくれてうれしかった。大企業の御曹司ができちゃった結婚なんて世間体が悪いって受け入れてもらえないかもってドキドキしてたから。ホッとした」

菫はお腹に両手を当て、声をかけるように撫でている。

その手の上に黎の大きな手が重なり、ふたりはふっと笑みを浮かべた。

「まだ動かないのか? それともうちのちびはおとなしすぎるのか?」

菫のお腹を慎重に撫でながら、黎は期待に満ちた表情を浮かべる。

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