御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
年明け以来、黎は忙しい仕事の合間に時間を捻出しては彼女と会っていると聞いていたのになにがあったのか。

その理由が気になったが、別れた恋人に未練があるのかあまりにもつらそうにしている黎に、菫はなにも聞けなかった。

同時にこれほど彼女を想っている黎からこの先自分が愛される可能性はないのだと、嫌でも思い知らされた。

だとすれば黎のことはきっぱりとあきらめなければならない。

そう考えた菫は、見合い相手と結婚すると嘘をついて退路を断ったのだ。

それから約一年半が経ち、今年の夏には架空の婚約者がドイツから帰国することになっている。

計画では婚約者のドイツ赴任期間が延びた、あるいは婚約を解消したということにして濁すつもりでいたが、それはまだ半年ほど先の話。

具体的にどう伝えるかはまだ考えていなかった。

なのにいきなり黎にその話を持ち出され、まとまりのない言葉ばかりが口を突いて出る。
 
これ以上追及されて結婚の話が嘘だとばれるのはまずい。やはり一刻も早く帰る方が賢明だ。
 
菫は黎が座る向こう側に置いたバッグを取ろうと手を伸ばし腰を浮かせた。

< 39 / 294 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop