御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「婚約者は、こんなに長く菫と離れていて平気なのか?」

「え……?」
 
黎は菫が伸ばした手を素早く掴み、苦しげに眉を寄せる。

「俺ならたとえ海外でも菫を連れていくのに。二年も離れるなんて、絶対に無理だ」

「無理って、それって、あの……黎君?」
 
重い声音で問いただす黎に、菫は違和感を覚える。
 
これまでもなにかと菫を心配し気遣っていたが、黎がここまで菫と婚約者との関係に立ち入ってくるのは初めてだ。
 
やはり変だ。黎になにかあったのだろうか。

菫は急に心配になった。

「黎君、嫌なことでもあったの? それともなにか悩みでも? だったら私が聞く――」

「菫は本当にその男と結婚したいのか?」
 
気を揉む菫の言葉を遮り、黎は改めて問いかける。

菫の答えを聞くまでは、掴んだ菫の手を離すつもりはなさそうだ。

「……えっと」
 
菫は答えに詰まる。

結婚の予定はないと正直に話すことに抵抗はないが、だったらどうして嘘などついたのかと聞かれるのはまずいのだ。
 
黎を忘れたくて嘘をついたなどと言えるわけもなく、強い視線を向ける黎から必死の思いで視線を逸らした。
 
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