御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
そのとき部屋の空気ががらりと変わる軽やかなメロディーが響き渡り、菫と黎は顔を見合わせる。

それは幼児教育番組のオープニング曲で、菫のスマホから流れていた。

「菖蒲からの電話だ……」
 
双子の妹の菖蒲の着信音だと思い出し、菫は黎に「ごめんね」と言いながらバッグからスマホを取り出した。

「……もしもし、菖蒲?」

「あ、菫ちゃん、久しぶり」

「うん。久しぶり……」

思いのほか明るい声がスマホから聞こえ、菫はひとまずホッとする。

菖蒲とは滅多に連絡を取り合わず、ましてや顔を合わせる機会はほとんどない。

母親から勘当されているも同然の菫は年末年始にも帰省せず、前回菖蒲と会ったのは一年半前の見合いで帰省したときだ。

「菫ちゃん? 聞こえてる?」

黙りこんでいた菫は、菖蒲の声に我に返る。

緊張のあまりとっさに出た声は震えていた。

すると傍らにいた黎が菫との距離を詰め、彼女の背にそっと手を当てた。

菫が家族とうまくいっていないと知っているからだろう、ここに俺がいるとでも言わんばかりに優しく撫でている。
 
菫はその動きを意識しながら次第に気持ちが落ち着いていくのを感じた。
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