御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
菫はすでに光が消えたスマホの画面を呆然と見つめる。

「今さらどうしてお見合いの話が……」

「それはこっちが聞きたい。内緒で断った見合いってなんの話だ?」

「あっ黎君。そ、それはね、あの」

黎の低く不機嫌な声に菫はうろたえる。

今の話を黎は聞いていたのだ。

いきなりの見合い話にひどく動揺し、黎が傍らにいることに気が回らなかった。

「たしか見合い相手が帰国したら結婚するって、さっき言っていたよな?」

「そ、そんなこと……言ったかな。ははっ。それにしても突然またお見合いしろなんて、おかしいよね。菖蒲も母さんもなにを考えてるんだろうね」

「俺は菫がなにを考えてるのかが知りたい」

菫はぎこちない笑みを浮かべごまかそうとするが、菫を見つめる黎の表情は固く、彼女の言葉を疑っているのは明らかだ。

菫は嘘をついた理由を正直に打ち明け想いを伝えようかと考えた。

けれど立場も見た目も極上の黎には女性からのアプローチは多いはずなのに、恋人どころか特定の女性の気配すらない。

大企業の後継者としての覚悟とともに仕事に励み、遊びに行くといっても今日のように航と飲みに行く程度。

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