御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
猫足ソファに身を埋め、菫はたどたどしい口調で見合いの件について話し始める。
 
途中、並んで座る黎をチラチラ見ては、その反応を確認する。

ただでさえ嘘がばれて居心地が悪いというのに、互いの身体が触れ合うほどの距離の近さ。

その緊張感はかなりのもの。
 
菫はときおり声を詰まらせ頭を整理しつつ、順を追って話し続けた。

ただ、黎への想いがばれないよう言葉を選ぶのは思いのほか神経を使った。

「結局、見合いはしたけどうまくいかなかったってことなんだな?」

ひととおり話を聞き終えた黎の問いに、菫は視線を泳がせうなずく。

淡々と事実を確認する黎の言葉が耳に痛いうえに嘘が次々とばれて決まりが悪い。

「婚約したというのも、相手の男性のドイツ赴任終了後に結婚するというのも――」

「ごめんなさい。全部嘘なの。先方も乗り気じゃなくて。それでふたりで話し合って破談にしちゃって」

落ち着き払った黎の声が逆に菫を責めているように思え、菫は黎の言葉を遮った。

「だったらどうしてあのときにそう言わなかったんだ。俺はてっきり菫は結婚が決まって幸せだと思ってたんだ。だから」

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