御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
黎は悔しげにそう言って顔をしかめた。

「黎君?」

「なんでもない。自分のふがいなさにイライラしているだけだ」

「ふがいなさ?」

きょとんとしている菫の頭をぐしゃりと撫で、黎は軽く首を横に振る。

「俺のことはいいから。で、なんで俺に本当のことを言わなかったんだ? いつかばれると思わなかったのか?」

「あ、あの。それは……」

ぴくりと身体を震わせた菫の手を、黎は両手で優しく包みこむ。

「菫、答えて」

それまで菫の手を掴んでいた黎の手が、答えを促すように菫の頬に移る。

菫はその表情の険しさに息をのんだ。

「ごめんなさい。お見合いがうまくいかなかったって恥ずかしくて言えなかったの。それにあのとき、黎君が彼女と結婚すると思ってて、水を差しちゃいけなかなって」

菫は黎への恋心を悟られないよう言葉を選び答える。

黎の結婚が近いと考えていたのは嘘ではないが、今再び黎への想いを胸にしまい嘘を重ねたことで胸が痛み泣きそうになる。

恥ずかしくて言えなかったのではない。

黎への想いが強すぎて本当のことが言えなかったのだ。

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