御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
黎は菫の両肩に手を置き、ゆっくりと顔を上げる。

菫はおずおずと手を伸ばして黎の背中に手を添え、ポンポンと何度か叩いた。

きっと別れた恋人を忘れられないのだろう。

黎への想いを断ち切れずにいる菫には、彼の苦しみが簡単に想像できる。

「菫、いいか」

無言で背中を撫で続ける菫の腕を掴み、黎は口を開く。

「菫が考えてるような理由じゃな――」

「ごめんなさい。いいの、わかってるし大丈夫。無理しないで」

落ち着いた声で話し始めた黎の言葉を、菫は大きな声で遮った。

赤い顔で何度も首を横に振るその様子に黎はたじろぐ。

「あのね。もうなにも言わなくていいから。黎君がつらそうにしているのを見てたし簡単に忘れられないってこともわかってる。だから無理しないで」

「いや、待て。俺は別に彼女とは」

「彼女の話は聞きたくない」

菫は語気を強めた。

今もまだ黎が好きなのだ、黎の口から彼女の話を聞くのはつらい。

めずらしく強い反応を見せた菫の顔を、黎が真っすぐ見つめる。

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