御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
淡々と口にした黎の言葉、ひどく甘いような気がした。

そこまで言ってもらえるほど自分たちが親密な関係だとは思えない。
 
そのとき黎の瞳に甘い光が宿り、襟足に黎の指先が優しく触れた。

「何度も言うけど、心配だから、今日は泊まっていけ」

「え……それは、やっぱり無理というか」

「今から帰っても遅くなるだけだし、明日は休みだろ」

迷いを見せる菫の気持ちを読んだのか、黎は畳みかけるように言葉を続けた。 

「たしかに休みだけど、無理だよ。まさか泊まるなんてありえない。これ以上迷惑はかけられないし、黎君に悪いし」

菫は黎の胸を押し返し、何度も首を横に振る。

なにより黎とひと晩一緒に過ごすなんて、恥ずかしくてどうにかなってしまいそうだ。

「いいから泊まっていけ」

「だけど……」

頑なに菫を帰そうとしない黎の強い言葉に圧倒され、菫は口ごもる。

「菫をひとりにしたくない」

「それなら平気。慣れてるから」

「慣れているわけじゃない。平気だと思いこんでるだけだ」

「そ、そんなこと……」

菫は隠している本音を黎に見透かされたような気がした。

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