御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「菫の結婚が決まったと聞いて、菫を極力気にせず深入りしないように意識していたんだ」

「え? 全然わからなかった。だって、よく果凛や航君と一緒に会ってたし」

予想外の言葉に驚き思い返しても、黎が菫を無視したりおかしな態度をとられた記憶はない。

「それが俺の弱さなんだよ。深入りしないと決めても結局菫との縁を切れなかった」

吐き出すようにそう言って、黎は菫の身体をくるりと自分の正面に向けた。

突然のことに菫は抵抗できず、気付けば目の前で黎が瞬きをしている。

少しでも動けばお互いの唇が触れ合いそうな親密な距離に、菫は息を止めた。

「菫が見合いをして結婚が決まったと聞いたとき、目の前が真っ暗になったよ。血の気が引くってこのことかって実感して、苦しくてたまらなかった」

「……黎君?」
 
菫のか細い声になんの反応も見せず、黎は菫の頬を両手で包みこむ。

「ただ、たとえ苦しくてもそれを菫に知られるわけにはいかなかった。結婚が決まっている菫を困らせたくなかったからな」

自身の心を振り返るように言葉を続ける黎を、菫は呆然と見つめ返す。

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