御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「俺がつらそうに見えていたのなら、その理由は菫だ。彼女と別れたからじゃない。菫の結婚が決まったと知って、自分のタイミングの悪さに絶望したんだよ」

黎の表情が見るからに固くなる。

吐き捨てるような声音から、言葉通り絶望を感じた。

「ど、どうして私の結婚がショックだったの? でも黎君は結婚するはずで、あんなに彼女と会ってたのに」

「だから、それが間違いなんだ」

これまでになく大きな声が部屋に響き、菫は息をのむ。

「悪い」

黎は身をすくめた菫の身体を慎重に抱き寄せる。

菫は呆然としたまま素直に黎の胸に身を任せた。

「たしかにあの頃は、無理にでも時間を作って彼女に会いに行っていた」

その言葉を聞いて、菫はわずかに身じろいだ。

「ひとまず今は俺の話を聞いてくれ」

菫を落ち着かせるように、黎は彼女の背中に手を添え優しく撫でる。

菫はその言葉に素直に従い背中に広がる温かさに意識を集中した。

< 68 / 294 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop