御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「菫が結婚するって聞いて、俺がどれほど苦しんだかわかるか? まずは彼女と別れてからだなんて考えずに、真っ先に菫に気持ちを告げていればよかったと何度後悔したか。綺麗ごとを並べてもたもたしていた自分の不甲斐なさが心底嫌になったよ」

「れ、黎君……」

「だけど、もう遠慮はしない。今日男に無理矢理タクシーに押しこめられそうになった菫を見たとき、たとえ婚約者がいても俺が菫を幸せにすると決めた。相手がどういう態度に出てこようが、絶対に手放さない。そう決めて菫を助けたんだ」
 
耳元に届く黎の絞り出すような声を、菫は呆然と聞いていた。

これほどありのままに感情をぶつけてくる黎は初めてだ。
 
大企業の御曹司という立場を背負い、黎はいつも冷静だった。

黎の発言や行動ひとつで会社の株価や利益に影響が出ることを心得ているからだ。

肩苦しい立場を淡々と受け止め、どんな状況の中でも冷静にやり過ごし本音を漏らすことはない。

それが黎の本来のパーソナリティーだと、菫は思いこんでいた。
 
けれど今の黎を見ると、それはまったく当てはまらない。

「菫、愛してる」

< 76 / 294 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop