御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
「そうだ、去年の夏に果凛や航君たちとキャンプに行ったでしょう? また四人で行こうよ。今度は川釣りでいいところを見せなきゃ」

「なあ、菫、それでいいのか?」

声を弾ませはしゃぐ菫に、黎はクスクス笑い声をあげる。

「キャンプでも釣りでも付き合うし、もちろんおいしい店ならいつでも連れて行くけど、それってこの二年を取り戻すことなのか?」

畳みかけるような声に、菫は黙りこむ。

「この二年間、菫とは何度も会って、電話もした。なんなら航や果凛も一緒に旅行にもいったよな」

「うん、そうだね」

菫の目がハッと大きくなる。黎の言わんとすることがわかったのだ。

「あ、あ、私……」

菫はもぞもぞと顔を上げ、それまで身を委ねていた黎の身体からそっと離れた。

スーツを脱ぎラフなスウェット姿の黎が、意志の強そうな瞳で菫を真っすぐ見つめている。

普段はワックスで後ろに流されている髪が無造作に額にかかっていて子どもっぽい印象を与えている。

それが妙に照れくさい。

菫は緊張を解くように何度か瞬きを繰り返した後、そっと手を伸ばし黎の髪に触れた。

「思っていたより硬いね」

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