御曹司の激愛に身を委ねたら、愛し子を授かりました~愛を知らない彼女の婚前懐妊~
艶のある真っすぐな黒髪は指通りがよく滑らかで、さわり心地は抜群だった。

そして菫はそのまま指先で黎の耳たぶをつまんでみる。

自分の耳よりも弾力が強いのは男性だからだろうかと考え、小さく笑った。

「もういいだろう」

耳たぶへの刺激がこそばゆいのか黎は顔を逸らし、菫の手を掴んで遠ざける。

「ふふ。気になってたの、この二年間。黎君の髪の手触りや耳たぶの柔らかさ。想像していたよりもいい感じだった」

顔を赤くしながら満足そうに話す菫に、黎は苦笑いを浮かべる。

「いつでも触ってよかったのに。もったいなかったな」

「うん。二年間、存分に触れることができたかもって思うと本当に残念」

「それで? 他にはないのか? この二年間してみたかったこととか、取り戻したいこと」

これで終わりじゃないだろうとばかりの期待をこめた声に、菫は「それは……」と口ごもる。

「あるんだろう? 言ってみろよ。これから先二度と後悔したり、もったいなかったなんて言いたくないんだ。俺にしてほしいことでもなんでも言ってみろ」

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