たすけて!田中くん
そもそも周囲というのは誰を指すのだろう。クラスメイトの女子たちとは会話はするけれど、特別親しいわけでもない。
「そ。例えば……君が仲良くしてる、クラスメイトとかさ〜」
「別に特別親しい人は……」
女子のことばかり頭に思い浮かべていたけれど、隣の席の私の大事な友人のことが頭を過ぎる。
たっ、たたたたた田中くんっ!?
非常にまずい。大人しくて細くて非力で、喧嘩すらしたことのなさそうな田中くんが、この男たちに拉致でもされたら抵抗すらできずにボコボコにされてしまう。
あの知的なメガネがぺしゃんこになる想像をして、咄嗟に声を上げる。
「それはダメ!」
「お、元気な返事だね〜」
「ダメ、絶対ダメ!」
冷たくあしらいつつも、なんだかんだ優しくて私の削られた精神力をいつも回復してくれる田中くん。
そんな彼の身に何か危険なことが起こってしまったとしたら、コンクリートに頭打ち付けて土下座どころでは済まない。
「てことは、俺のお願いを聞いてくれるってことだね」
「うっ」
「そうだよね?」
「先輩たちのことは心底どうでもいいですが、仕方ないです」
ため息まじりに承諾すると、ゆた先輩が満足げに頷いた。思い通りに動かされた感があり苛立つ。
「俺とも仲良くやってこーね?」
軽薄な笑みでバナナオレを再び渡してくるゆた先輩を睨む。
「どうぞ、よろしくお願いします」
片方の口角を上げて、生温いバナナオレを突き返した。