たすけて!田中くん
掴む力も、引っ張る勢いも強く、倒れそうになる。
私を人質として連れて行きたいのだろうけど、私には実際その価値がないことを彼らが知ったらどうなるのだろう。
拉致されたところで、あの敦士たちが助けに来るとも思えない。つまりは、私は自分の身は自分で守らないといけないのだ。
「あの、私捕まえても意味ないけど」
「うるせぇな、いいから歩けよ!」
「だから話聞いてってば!」
私が反抗したことに苛立った銀髪の男が、カーディガンを引っ張って「黙れつってんだろ」と凄んできた。
けれどそれに対する恐怖よりも、今はカーディガンを引っ張られた勢いて、ボタンがひとつ取れてしまったことに意識が向いてしまう。
黒いボタンが地面に虚しく転がっている。
あれは……
「おい、うちの学校のやつに何してんだよ!」