たすけて!田中くん
「付き合ったら好きになるかもしれないじゃない!」
「む、むり……!」
窓の枠からわずかに身を乗り出すと、囲われている人物が見えた。
明るめの茶髪に青メッシュの可愛らしい顔をした男子。やっぱり清水希って人だ。
それにしてもこの女子達強引すぎだ。
明らかに嫌がっていて、告白も断られているのに引かないなんて。
「とりあえずさ、一週間付き合うのはどう!?」
「それいい! 好きになるかもだし!」
「はぁ!? ちょ、」
あまりにも強引で「うわぁ」と声を漏らしてしまう。
やばい。口に出しちゃった。と、思ったときには既に遅く、鋭い視線が一気にこちらへ向けられていた。
今更気づいたけれど、リボンが青だ。ということは相手は先輩。めんどくさいことになりそうだ。
「アンタ、1年の喜久本でしょ」
刺々しく私に声をかけてくる一人の先輩に、顔が引きつる。どうやら私の顔と名前を知っているらしい。この人たちも敦士に興味がある女子なのかもしれない。
「私のこと知ってるんですか? 先輩方」
「あんまいい気に乗んなよ。どうせ遊ばれてるに決まってる」
むしろこっちは迷惑なんですが。それにしても敵意丸出しの視線が痛くて、早いところここから抜け出したい。