たすけて!田中くん


「付き合ったら好きになるかもしれないじゃない!」

「む、むり……!」

窓の枠からわずかに身を乗り出すと、囲われている人物が見えた。

明るめの茶髪に青メッシュの可愛らしい顔をした男子。やっぱり清水希って人だ。

それにしてもこの女子達強引すぎだ。

明らかに嫌がっていて、告白も断られているのに引かないなんて。


「とりあえずさ、一週間付き合うのはどう!?」

「それいい! 好きになるかもだし!」

「はぁ!? ちょ、」

あまりにも強引で「うわぁ」と声を漏らしてしまう。

やばい。口に出しちゃった。と、思ったときには既に遅く、鋭い視線が一気にこちらへ向けられていた。


今更気づいたけれど、リボンが青だ。ということは相手は先輩。めんどくさいことになりそうだ。


「アンタ、1年の喜久本でしょ」

刺々しく私に声をかけてくる一人の先輩に、顔が引きつる。どうやら私の顔と名前を知っているらしい。この人たちも敦士に興味がある女子なのかもしれない。


「私のこと知ってるんですか? 先輩方」

「あんまいい気に乗んなよ。どうせ遊ばれてるに決まってる」

むしろこっちは迷惑なんですが。それにしても敵意丸出しの視線が痛くて、早いところここから抜け出したい。



< 59 / 232 >

この作品をシェア

pagetop