たすけて!田中くん
「清水くんのことひとりの人間として見てますか?」
「当たり前でしょ!!」
「それなら、彼の意見もちゃんと聞いて受け入れるべきです」
「は? アンタが割って入ったせいで話がおかしくなってるんでしょ。せっかく上手くいきそうだったのに!」
怒り狂ったひとりの先輩が、顔を真っ赤にして叫ぶように言葉を吐き出した。
なにも言わない周りの先輩達も心底憎そうに私を睨みつけている。
ダメだ、話にならない。
どこをどう見て、上手くいきそうだったと思うんだ。馬鹿みたいだ。
「なに笑ってんだよ!!」
「あ、ごめんなさい。ちょっと可笑しいなって思って」
断られているのに無理矢理に付き合おうとするなんて、清水くんの気持ちを無視している。これではただ清水くんの彼女の座がほしいとしか思えない。
「ねえ、先輩。清水くんの意見を聞きましょうよ」
風に靡く長い髪を片手で押さえながら、もう片方の手を窓の外に出す。
「清水くん」
「……なに」
私に声をかけられて、ビクリと反応する清水くんはまるで怯えた子犬みたいだ。そんな彼を恍惚と眺めている一部の女子達が怖い。
「こっち、おいで」
伸ばした私の手を、目を見開いて清水くんが見つめる。